「身体意識」について

今回は、「身体意識」について考えて見ましょう。
「身体意識」、それは体をイメージ通り動かす上でキーになる概念です。
高岡英夫氏によると、質の高い体の運用のために役立つ身体意識には主に以下の7つのものがあると言います。
センター・下丹田・中丹田・転中子・ベスト・リバース・レーザーがそれです。


ここでひとつひとつ解説することはしませんが、これらの中で剣道において大切な身体イメージは、「センター」と「ベスト」です。
センターとは、頭の真上の少し後方部分と、
肛門の少し後の部分を結んだ体のまさに真ん中を通る芯を
そのまま天と地の両方に伸ばしたイメージの身体意識です。
このセンターと言う身体意識を持つことに成功すると、
肉体的には正しい姿勢・美しい歩き方・バランスのよい体を手に入れることができ、
精神的には一本筋の通った粘り強い人格を手に入れることができるそうです。
剣道で正中線と呼ばれる概念に近いものです。
ただし、通常、剣道では相手の正中線と自分の正中線を意識しますが、
剣道で正中線を考えるときには、自分の眉間とへそを結ぶ体の前面にある線という、わりと大雑把なイメージで捉えています。
左の拳を正中線上におくと言う場合などがそうです。
しかし、身体意識としての正中線は、体の中を貫く線のイメージです。
剣道においてもこの身体意識としてのセンターと言う概念を応用し、
正中線のイメージにふくらみを持たせて、
これまでの正中線という概念を相手の正中線と自分の正中線を結ぶ面として捉えなおすと、
身体意識としての正中線を身につけることができる上に、
剣道的にもうまい効果が現れるのではないかと強く感じます。
また、同じくベストという身体意識ですが、これは、鎖骨の真ん中から脇の下を通り、
肩の裏を通って肩甲骨に沿って首の付け根からもとの位置に戻る線の意識です。
洋服のベストの袖口に似ていることからベストと呼ばれています。
この身体意識を身につけると、手首や腕を使った仕事をした時の疲れ具合が大きく改善されます。
剣道では、竹刀を肩甲骨で振れとわれる教えの意味が直感的に分かるようになります。
この身体意識なしに竹刀を振る動作を考える場合には、
肩→肘→手首→手の内→剣先という意識になりますが、
ベストという身体意識を応用すると、肩甲骨の内側、つまり体幹周辺の筋肉も全て使った
大きな動きで竹刀を振ると言うイメージになります。
それでいて、実際の動きは肩で振っているのとさほど変わらない振幅になり、
非常にいい具合になります。
この振り方をマスターすると、肩や上腕の筋肉を大きく使う振り方から脱却でき、
腕がいたずらに太くなるのを防ぐこともできます。
上記ふたつの身体意識を導入するだけでも自分の体の動きの幅が広がります。
皆さんも、身体意識について書かれた本を読んで見られることをお勧めします。
いま、京都の嵐山の茶店で桜餅を食べながらこの記事を書いていますので
今回参考にした書籍が手元にありません。
次回のメールでご紹介することにいたします。
戸締り用心火の用心、一日一善。
健やかな精神は健やかな肉体に宿ります。さぁ、稽古しましょう!
それでは、また土曜日にいつもの道場でお会いしましょう。

この記事を書いた人

剣道錬士六段 ザイツゴロウ