『宮崎正裕の剣道』スキージャーナル社


平成2年11月3日日本武道館 私は生まれて初めて剣道全日本選手権に出かけました。
その年の覇者が宮崎正裕(当時)6段でした。それは、彼が始めて賜杯を手にした年でした。

翌年には、当時お世話になっていた杉並大義塾道場の故中村太郎先生、現在三田剣友会でお世話になっている戸田忠男先生、現在一橋大学剣道部師範の千葉仁先生、若くして中国大陸での列車事故でお亡くなりになった高知の川添哲夫先生に続いて5人目となる2度目の賜杯を、それまで誰もなしえなかった「連覇」という最高の形で手にしました。

その後も平成5・8・10・11年に、2度の連覇を含めて6度の大会制覇という前人未到の大記録を打ち立てた宮崎正裕氏は、まさに平成を代表する最強剣士です。

この言わずと知れた平成最強剣士、宮崎正裕教士7段の著書が「宮崎正裕の剣道」です。
このように紹介すると、数多くの大会で勝利してきた著者の作品だけに、試合に勝ちたい人におススメ!と言いたくなるところですが、実際は違います。

剣道の稽古に取り組む際の理業両面でのポイントが驚くほど丁寧に解説されています。

輝かしい実績を残し続けてきた剣士だけに、技術解説部分が充実しているのはもちろんですが、理論に走りすぎることなく、かといって単に実践を強調するだけでもなく・・・その両面からバランスの取れたアプローチをすることで、剣道稽古の要諦に関する解説を試みているという印象です。非常に読みやすいのも特長でしょう。現在進行形で剣道に取り組んでいる全ての人が一読されることを期待して止まない奥の深い一冊です。

宮崎先生が、輝かしい実績の裏で、その実績相応の深い剣道研究に取り組まれていたことを想像させる一冊です。

特に幼少年の剣道指導に当たっている中堅剣士の皆さんは、この本を座右において、指導する幼少年と共に、改めて基本部分から創意工夫の稽古に取り組まれることで師弟同業を実践されることをおススメします。あの持田盛二範士でさえ、基本の習得に50年掛かったといわれるほど剣道の基本は奥深いものですので、手抜かりなく取り組みましょう。

研究をベースに自分なりの工夫を試みる。
そんな姿勢の大切さを学ぶことができるような気がします。

生涯剣道修行という考えの指導的立場の方には特にお勧めの一冊です。

この記事を書いた人

剣道錬士六段 ザイツゴロウ