『剣道の法則』 体育とスポーツ出版社

以下は九州松下剣友会で日ごろからお世話になっている宮城県出身の佐野さんに頂いた堀篭範士の書が入った手ぬぐいです。

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この本は、その佐野さんの師匠である堀篭敬蔵剣道範士九段の著書です。

2003年に佐野さんから剣友会のメンバーに向けて、この本をすすめる旨のメールが発信された際に私も購入して読ませていただきました。当時ちょうど、「剣道においては事理一致の修行が大切だ」との考えに触れる機会が増えていた私にとって、では剣の理法について学ぶには具体的にどうしたらよいのかということは切実な問題でした。これと言ったよい方法も見えず、もんもんと悩んでいた時期でもありました。

ですので、この本との出会いは、まさに「渡りに舟」に感じたことを覚えています。

本の中で堀篭範士も触れられていますが、現代では剣道の専門家でない限り、剣の「理」を専門書から学ぶ機会はなく、かといって口伝してくれる師匠にめぐり合うこともかなわず、剣の理法を習得することが非常に難しくなってきています。「剣道の法則」と銘打って、奥深い剣の哲理に関する多くのエッセンスを、誰もが理解しやすい平易な文体でつまびらかにしてくれているこの本は、そんな現代の剣道事情において貴重かつ必読の一冊であることに疑いの余地がないでしょう。

自分の技量に応じた剣の哲理を身に付けたいと願う剣士や、昇段審査の際の学科試験のあり方に疑問を感じる剣士にとっては、本当に参考になる一冊であると思います。

工夫のない稽古から得られるものが少ないことに気づく剣士が少ないことは悲しい事実ですが、幸運にもそのことに気づいたとして、実際に工夫をしようと試みた時に、工夫の取っ掛かりそのものが得られず苦しむ羽目に陥る剣士が多いのもまた事実のようです。私が実際それでした。

この本を通じて、道場の外で剣の理法を研究し、そこで得られた自分なりの理解を、今度は日々の道場での稽古における「事」の修行の中で試すことができる。私の稽古の質はこの本との出会いで画期的に向上しました。

この本に著されている内容を礎にして日々の稽古でたゆまず工夫するならば大いなる収穫が得られること請け合いでしょう。

著書に以下のような一文があります。

剣道の修行を通して人間としての道を学ぶ。人間の道とは何かと言えば「当たり前のことを当たり前にする。」ことである。これは「言うは易く行なうは難し」ことではあるが、人間としてもっとも大切なことである。

かつて剣術修行者にとって当たり前であったことの中には、現代ではすでに当たり前でないことも沢山あるでしょう。「確かな師匠を得にくいこと」がその典型的なひとつであると思います。
目の前に正師を置いて日々の修行に取り組めるのであればこのような書物は不要かもしれません。が、そうでないならばこの本を座右に置いて、この本を師匠と思い、そこに述べられている一字一句を咀嚼して稽古すると良いと思います。ぜひお試しください。

この記事を書いた人

剣道錬士六段 ザイツゴロウ