『腰と丹田で行う剣道』 島津書房

腰と丹田で行う剣道
腰と丹田で行う剣道

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森田 文十郎
島津書房
売り上げランキング: 391750

この本をまだ読んでいない方は、ぜひ読んでみることをお勧めします。
私は、ちょうど「次のステージ」に進むためには、何をどうすればよいのかと悩みに悩んでいた2005年の今頃の時期にこの本と出会いました。以来、ほぼ2年かけて、この本に書かれている理法を実践する努力を続けてきました。そして、今強く感じているのは、森田文十郎先生の洞察力がいかに素晴らしいものであったかと言うことです。
どれほどの刺激を受けたかと言えば、この本に書かれた内容に感動し、触発されて、剣の完全操作法の実践について思ったことを「打突のメカニズム」というタイトルで記事にして、そこに書いたことを、これまで2年近く忠実に実践してきたほどです。
この本に出会うまで、私は自分の打突を気剣体一致の水準に引き上げ、更に一拍子にするために、手の内の矯正、手首の動きの訓練、左こぶしの位置の矯正、重心を安定すること、ひかがみを軽く伸ばすこと、左足のかかとを上げすぎないこと、左こぶしの始動と右足の始動とのバランスをとること、出足を強化すること、竹刀の振り方の工夫、踏み込みと打突の瞬間の一致、打ち抜けること、残心で気を抜かないこと・・・などなどと、ひとつひとつ自分の矯正ポイントを意識しながら取り組んでいました。
ところが、ひとつ意識すると他がお留守、そこを意識すると別のところがお留守と、どこかに意識が行く度に他の何かが意識から外れてしまうという苦悩にさいなまれていたのです。
それが、この本に書かれている剣の完全操作に関する洞察に出会ったことで氷解してしまいました。
なすべきことは全て「一連の動作」の一部である。というのがポイントです。自然の流れに従うのです。
これまで沢山の複雑な動きの総合としてイメージしていた一拍子の打突が、この本を読むことで、全く違ったイメージに置き換えられました。まさに革命的な瞬間を味わった一冊です。
鍛錬された呼吸法によって丹田に蓄えられた気のエネルギーが源泉になるのは言うまでもありませんが、その丹田に蓄積した気を更にひかがみを通して左足のかかとにまで充満させます。
こうして十分に気が満ちた状態でスタンバイした左足の湧泉辺りを踏むことを初動にして、後は体の物理的なメカニズムに順次気を伝えて行き、順番に動かしていくことで、最終的に無理なく一拍子の打突に結実させて、当然の帰結として十分な残心につなげつつ、次の動きへのエネルギーをためたままの形で完結する。そんな一連の動きをシームレスに、いわゆる「一拍子で」行う。そうすることで、そこには澱みも滞りもなくなり、一瞬の機を捉えて意を決した一直線のエネルギーが満ちた「捨てた」打突となる。
この本と出会えたおかげで、私はささやかな階段をひとつ上がることができたと自信を持って言うことができます。この本から得られることを思えばこの価格は決して高くはありません。
剣の理法を求めるならば、一拍子の打突の実践を支える理合いとして、これ以上のものはないと私は確信しています。ぜひこの本は読まれてください!

この記事を書いた人

剣道錬士六段 ザイツゴロウ