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2005年10月28日

「剣先」について


今回は「剣先」について書かれたものがありましたのでご紹介します。

私が高校生の頃、進学校の剣道部でキャプテンをやっていたのですが、
私がキャプテンを引き継いだ高校2年の頃には、正規の指導者がおりませんでした。

入部した際に、たった5人ほどしかいない剣道部であるのを見て、
「こんなさびしい部活に青春を預けることはできん!!」と奮起し、
学校中をリクルートして回ったおかげで、部員数は20人以上に膨れていました。

自分が誘った手前、いい加減なことはできない・・・
そんな思いで、毎日「どんな稽古にしたらよいか」と研究したのを時々懐かしく思い出します。

当時は「剣道にっぽん」の特集などを参考にすることが多かったのですが、
そんな状況の中、一冊の本が私の支えでした。

それは、昭和49年に旺文社から発刊された(昭和54年第7刷となった)
当時範士八段だった中野八十ニ先生の「剣道」でした。

当時は全く気にもならず、あとから知ったことなのですが、
中野先生は昭和12年から慶応大学普通部の教師をされておられたので、
今思えば、私が慶応に進んだのも何かのご縁かもしれません。
(体育会には入部しませんでしたが・・・)

最近、体育とスポーツ出版社が昭和60年に発刊した
中野先生の「剣道上達の秘訣」という本を読む機会がありましたので、
今回は、その本の中からご紹介します。

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『剣先の働き』

剣先の働きについてですが、構えて剣先を動かさないほうがよいか、
動かしたほうがよいか。またその動かし方は・・・。

これは、動かさないより、動かしたほうが良い。
このことは我々ばかりでなく、千葉周作も言っている。
それは、じっと構えて、どこから来ても応じられるような状態なら別ですが、
そういうことは、なかなかあるものではない。
停止した状態はよくないと沢庵も言っています。
昔の人は、心がそこに固定しないようにということをよく言ったが、
達人になって、じっと構えても心が固定しなければいいが、
どうしても、じっと構えることによって、固定してしまう。
そういう意味では、剣先をせきれいの尾のごとく、上・下に動かす。
とくに下段になる様に動かす。これは確かにいいと思う。

『剣先の活用』

剣先のつけ所は、中段の構えの場合、相手のどこへつけたららいいでしょうか。

刀の場合は、そりがあるから、剣先の延長はずっと高くなる。
そこで竹刀の場合に、刀と同じようにつけようと思えば高くなってしまう。
これがはたしていいかどうか。
私自身は、相手のノドぐらいのところにつけている。
こうすると打たれないし、打つときもちょうどいい。
それを相手の目ぐらいまで上げてしまうと、
よほど応じができるようならば良いが、やはりよくないようだ。
剣先の動きということも、そういう意味で、
ただ動かしていて相手の打ちに応ずるということと、
もう一つ攻めとして動かすという二つの考え方がある。
これを研究してみると、攻めにつながる剣先の働かせ方は、
一刀流にもあるが、まず相手の剣先に触れる。表・裏と軽く触れる。
それから、軽く押さえる。それだけでも相手に対するひとつの攻めになる。
つぎは、ピッ、ピピッとはじく。四つ目は巻くというのがある。
それから相手の剣先を払うというのもある。
直接技として打ちにつながるのは、巻く、払うというものである。
あとは、押さえ、触れ、はじいて様子をみて打つ。これらは直ぐ打ちにはつながらない。
しかし、みんなせきれいの尾のようにやればいいというわけではない。
同じ竹刀を動かすにしても、はっきりした考えを持ってやることが大切である。

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相手との剣先の攻防の際に竹刀をどのように動かせばよいかという問題は
非常に悩ましいですね。

色々な考え方がある中のひとつとして少しでも参考になればと思います。

戸締り用心火の用心、一日一善。
健やかな精神は健やかな肉体に宿ります。さぁ、稽古しましょう!

それでは、また土曜日にいつもの道場でお会いしましょう。


2005年10月27日

居合道に入門しました!


とうとう居合道に入門いたしました。
本日初稽古でした。

剣道とだいぶ勝手が違うようで・・・。

抜刀・納刀が思うように行かないのです。
2時間ほどのお稽古で、なんとか抜刀のほうはさまになってきた気がするけれど・・・

納刀が・・・これじゃ指が切れる・・・いや、これじゃ切れる・・・うぅ、これでも切れる・・・。
指が何本あっても足りない状況です (T_T)

時間をかけてがんばります。はい。


2005年10月13日

「刃筋」について


まず最初に、先週ご紹介した「身体意識」について書かれた本についてご紹介しておきます。

「身体意識を鍛える〜閉じ込められた"カラダの力"を呼び覚ます法〜」

 高岡英夫 青春出版社刊

です。青春出版社・・・懐かしいですね。
英語の参考書で有名なのがありましたよね・・・確か・・・うぅ、思い出せない(T_T)
英単語を覚えるやつとか英文法を覚えるやつとかだったような・・・。
誰か覚えていませんか?

気を取り直して、今回は、「刃筋」について考えて見ましょう。

本物の日本刀で物を切ったことはありますか?
私はありません(*^_^*)

まぁ、当たり前のことといえばそれまでですが、
本物の日本刀で物を切ったことの無い剣士が増えているそうです。

実際そうだと思います。

日本刀は、それほど安いものでもないし、手軽に手に入るものでもない。

そのため、一度も日本刀を持ったことの無い八段範士の先生と言うのもいらっしゃるようです。

で、最近お世話になっている刀剣屋のご主人が言うには、

本物の(刃引きでない)日本刀を持ったことの無い八段範士先生と、
同じく本物の日本刀を持ったことの無い三段剣士に日本刀を持たせ、
範士先生には「お好きにどうぞ」と藁を切らせ、
三段剣士には、「こうこう、こういう風に切りなさい」と手ほどきをして藁を切らせる。

すると、大抵は、範士先生のほうはうまく切れず、三段剣士の方は藁が切れたりするそうです。

もちろん、その場で、三段剣士にしたのと同じように範士先生にも切り方を手ほどきすれば、すぐに藁を切れる様になります。

ここで、三段剣士と範士先生の違いはどこに出るかと言うと、これは、藁の切り口に出るそうです。

範士先生の切った藁の切り口は、きれいにスパッと切れているそうです。
これは、範士先生の太刀筋が立派だからです。

宮本武蔵の話の中にも、柳生石舟斎が切った花の茎の切り口を見た武蔵が
その腕の凄さを見て取ったというようなくだりがあったような・・・。

本物の日本刀で切ったことの無い範士先生でも、
長い剣道修行の間に正しい刃筋で切ることを身に着けているのです。

あとは、竹刀操作を太刀の操作に切り替えてあげるだけで完成。

剣道で、スポーツちゃんばらのように竹刀を相手の打突部位に当てるだけでいいのなら
色々な当て方のバリエーションがあるでしょう。

しかし、「刃筋正しく切る」となると、有効な太刀筋はそれほど多くはありません。
まして、手首や手の内が硬くては、真っ直ぐ切り下ろすしかなくなってしまいます。

その限られた太刀筋の中で、相手に立ち向かうには、手の内を柔らかくしてただでさえ数少ない太刀筋をフルに使う必要があります。

準備運動の大きく上下に素振り、左右に切り替えして、素振りの時にはそのような点を意識して取り組まれるといいかもしれません。

剣道は奥の深いものですね・・・。

切り返し、打ち込み、懸り稽古、地稽古・・・何をするにも太刀筋正しく振りましょう!

戸締り用心火の用心、一日一善。
健やかな精神は健やかな肉体に宿ります。さぁ、稽古しましょう!

それでは、また土曜日にいつもの道場でお会いしましょう。


2005年10月06日

「身体意識」について


今回は、「身体意識」について考えて見ましょう。

「身体意識」、それは体をイメージ通り動かす上でキーになる概念です。
高岡英夫氏によると、質の高い体の運用のために役立つ身体意識には主に以下の7つのものがあると言います。
センター・下丹田・中丹田・転中子・ベスト・リバース・レーザーがそれです。

ここでひとつひとつ解説することはしませんが、これらの中で剣道において大切な身体イメージは、「センター」と「ベスト」です。

センターとは、頭の真上の少し後方部分と、
肛門の少し後の部分を結んだ体のまさに真ん中を通る芯を
そのまま天と地の両方に伸ばしたイメージの身体意識です。
このセンターと言う身体意識を持つことに成功すると、
肉体的には正しい姿勢・美しい歩き方・バランスのよい体を手に入れることができ、
精神的には一本筋の通った粘り強い人格を手に入れることができるそうです。

剣道で正中線と呼ばれる概念に近いものです。

ただし、通常、剣道では相手の正中線と自分の正中線を意識しますが、
剣道で正中線を考えるときには、自分の眉間とへそを結ぶ体の前面にある線という、わりと大雑把なイメージで捉えています。

左の拳を正中線上におくと言う場合などがそうです。

しかし、身体意識としての正中線は、体の中を貫く線のイメージです。

剣道においてもこの身体意識としてのセンターと言う概念を応用し、
正中線のイメージにふくらみを持たせて、
これまでの正中線という概念を相手の正中線と自分の正中線を結ぶ面として捉えなおすと、
身体意識としての正中線を身につけることができる上に、
剣道的にもうまい効果が現れるのではないかと強く感じます。

また、同じくベストという身体意識ですが、これは、鎖骨の真ん中から脇の下を通り、
肩の裏を通って肩甲骨に沿って首の付け根からもとの位置に戻る線の意識です。
洋服のベストの袖口に似ていることからベストと呼ばれています。

この身体意識を身につけると、手首や腕を使った仕事をした時の疲れ具合が大きく改善されます。
剣道では、竹刀を肩甲骨で振れとわれる教えの意味が直感的に分かるようになります。

この身体意識なしに竹刀を振る動作を考える場合には、
肩→肘→手首→手の内→剣先という意識になりますが、
ベストという身体意識を応用すると、肩甲骨の内側、つまり体幹周辺の筋肉も全て使った
大きな動きで竹刀を振ると言うイメージになります。

それでいて、実際の動きは肩で振っているのとさほど変わらない振幅になり、
非常にいい具合になります。

この振り方をマスターすると、肩や上腕の筋肉を大きく使う振り方から脱却でき、
腕がいたずらに太くなるのを防ぐこともできます。

上記ふたつの身体意識を導入するだけでも自分の体の動きの幅が広がります。

皆さんも、身体意識について書かれた本を読んで見られることをお勧めします。
いま、京都の嵐山の茶店で桜餅を食べながらこの記事を書いていますので
今回参考にした書籍が手元にありません。

次回のメールでご紹介することにいたします。

戸締り用心火の用心、一日一善。
健やかな精神は健やかな肉体に宿ります。さぁ、稽古しましょう!

それでは、また土曜日にいつもの道場でお会いしましょう。


2005年10月05日

真剣『出羽大掾藤原国路』


ロータリークラブの先輩の紹介で訪れた松林堂という刀剣店で出羽大掾藤原国路銘の真剣を購入した。
感慨深い・・・。

はじめて手にする真剣は妖艶。
流石に、試しに切って見たいとは思わなかったが、このような刃物を手にして殺しあう場面を想像してぞっとした。

今年の年初に、そろそろ真剣を持ちたいと願ったのが実現した。
この勢いで行けば、居合と古流の形を学びたいと考えたのもいずれ叶うだろう。
念ずれば通ずとはよく言ったものだ。