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「剣道の心得」について


毎週活気あふれる稽古会を開催できて嬉しい限りです。

みなさん、この勢いで、(自然体で)がんばりましょう(*^_^*)

さて、今回は、古賀さんから稽古に取り入れた方がいいのではと
提案を頂いた「先」をはじめとした「剣道の心得」についてです。

剣道の心得などというと色々とあるのですが、そんな中でも
一番大事なことをひとつだけ挙げるとすれば
「機先を制して勝ちを得る」ことです。

私が目指す「正しく美しい剣道で勝つ」という目標は、
このコンセプトに基づいています。
「正しく美しい剣道」とは「機先を制する剣道」のことです。

昇段審査用の剣道、試合用の剣道、稽古用の剣道等と分けないで、
正しい剣道を追及していった結果、ひとつの剣道スタイルで、
昇段もでき、勝ちを得ることもできるレベルになることを志して
日々の稽古に取り組んでいます。

ちょっと贅沢な感じもしますが、志は高く!がモットーですので(^.^)

そこで、機先を制して勝ちを収める剣道では、
「先を取ることができるかどうか」が勝敗を決します。

勝ちを確定させるためには、機をみて先を取った後に、
「驚・恐・疑・惑」の四戒に囚われることなく、
「無刀の心得」で踏み込んで、「拍子」を外さず切らねばなりません。

ですが、まず、何よりも機を見て先を取ることがなくては
何も始まりません。

機もみるに当たっての基本は、「枕を押さふる」という心がけです。
これは相手に頭を上げさせないという心構えです。

相手のかかるの「か」、飛ぶの「と」、打つの「う」、を押さえ
相手が行動を起こすことができないようにすることです。

剣道に限らず兵法を用いた勝負事では、人に動かされてしまって
後手に回るのが最も悪い状態です。
何とかして相手を自由に動かすことを工夫するのが大切。

そこで、相手が行動を起こす前に兆しを捉えて制してしまう。
これを繰り返すうちに、思惑通り相手が動く瞬間が生まれ、そこを制する。

ここで注意が必要なのは「押さえよう押さえようとする心は後手である。」
という武蔵の言葉です。

後手になることは最も戒められるべき所です。
後手になることなく押さえる工夫が必要です。

「道に任せてわざをなす内に、敵もわざをせんと思ふ頭をおさえて、
何事も役に立たせず敵をこなす所、是兵法の達者、鍛錬の故也。」
とあるように、動中静、静中動の「懸待一致」でわざをする間に
機会が生まれるという心得が欠かせません。

自分勝手に拍子を計って、今だ!と決め付けて打ち込むだけでは、
例え当たったとしても、ただ当たっているだけで進歩はありません。

もちろん、当てることができないようでは話になりませんが・・・。

機を見る稽古と同時に、先を取ることができるように稽古せねばなりません。

宮本武蔵は五輪の書の火の巻に「三つの先と云ふ事」として
先について書いています。

まとめると

先の次第で勝ちを得るものであるから、先以上に大事なものはない。
先には、

1.懸の先   こちらから敵に懸かる時の先
2.待の先   敵からこちらに懸かる時の先
3.体々の先  こちらも敵も懸かりあう時の先

という3つの先があり、これ以外にはない。

ということです。

取るべき先の現れ方は、自分と相手の関係性によって千変万化します。
これを如何に捉えるか。

「待の先」では「待」という字が使われているので相手が打ってくるのを
待って対応するような印象がありますが違います。

剣道では先に動かれては勝つことはできません。

逆に「懸の先」では「懸」という字が使われているので、こちらから
打って出ればいいような印象がありますがこれも違います。

剣道では先に動いたら負けてしまいます。

このように言うとわかりにくいですが、もう少しわかりやすく言うと、
剣道では先に動かされた挙句に、相手に先に動かれた時に負ける。
先に相手を動かした上で、こちらが先に動けば勝てるということです。

相手を動かして、その動きの起こる兆しのところでこちらが動く。
機会を自ら相手に作り出して制する。ここを研究せねばなりません。

機先を制するとはそういうことです。

武蔵は三十五カ条兵法の中で、

かかる時の先は「身は懸かる身にして、足と心を中に残し、たるまず、はらず、
敵の心を動かし」て取ると教えています。

一方で、懸り来るときの先は「我身に心なくして、程近き時、心をはなし、
敵の動きに従い、其の儘」取ると教えています。

心を放すとは、頭で考えず、目だけで見ず、相手の動きに心を動かされないように
心を解き放っておいて、解き放った心の作用で相手の動きを捉え、
一瞬の機会を捉えて先を取るということです。

ガンダムでいうニュータイプのような状態です。
スターウォーズで言うフォースを使うジェダイの状態です(*^_^*)

互いに懸かりあう時は、身を強くして、太刀を正しくして、
とにかく先を取れと教えています。

ともあれ、自分なりの「懸」「待」について研究が必要です。
心と体の働きについて考えると、おぼろげにわかってくることがあります。

機先を制した後に勝ちを確定させるのが打突です。
相手を探る意図のある打突や勝ちを確定させる打突以外の
ただ当てているだけの無意味な打突は控え、意味のある打突を心がけましょう。

夏の稽古は体力的に厳しい環境で行われます。
このような時期は、機先を制する剣道を目指して取り組むことで
打突の質・剣道の質を高めることに取り組みましょう!

無理はいけません(*^_^*)

戸締り用心火の用心、一日一善。
健やかな精神は健やかな肉体に宿るのです!稽古しましょう!

それでは、また土曜日にお会いしましょう。


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