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第53回全日本剣道選手権大会


今年も全日本剣道選手権大会が開催されました。
残念ながら今回もTVでの観戦となりました。

思えば東京の大学に通っていた平成2年に、当時お世話になっていた杉並大義塾の仲間と日本武道館に出かけたのが始めての観戦でした。あの宮崎正裕選手が初優勝した年です。

私がお世話になっていた杉並大義塾の故中村太郎先生が、はじめて全日本剣道選手権を2回制してから、何人かの選手が複数回の優勝を飾ってはいましたが、ご存知の通り、この年宮崎選手が初優勝を飾って後は、大会の歴史が彼1人によって塗り替えられました。

あれから14年・・・

当時宮崎選手の好敵手といわれた、大阪府警の石田利也教士七段がTV解説をされているのを見て、ずいぶん選手権の世代も交代したものだなぁと実感しました。

さて、大会のほうですが、今年は例年以上に見ごたえのある立合いが多かったように感じました。
TVで放映されたのはベスト8以降の7試合だけでしたが、観戦記をあげることにいたします。

準々決勝

松本誠(大阪 五段 31歳) VS 内村良一(東京 四段 25歳)

延長に入り、上段の松本選手を霞気味に高い位置から攻める内村選手。
松本選手が手元を下げて守ろうとしたところを、松本選手の竹刀に平行に小手を決めた内村選手が勝利。

上園修(鹿児島 錬士六段 34歳) VS 磯合和彦(京都 六段 32歳)

磯合選手の攻めは素晴らしく、小気味よく、巧みに間合いを取りながら
手元を攻め、面を攻め、下を攻め、積極的にプレッシャーをかけて手元を浮かせて打っていく。
上園選手も負けじと磯合選手の剣先が下がったところを片手で突くなど応戦。
しかし、全体的に磯合選手押し気味に試合は進む。

延長に入って徐々に磯合選手の攻めの端を捉え始めた上園選手が、
最後は攻めて出ようとする磯合選手の出端に見事に捨てて面に飛び込んで勝利。

清家宏一(大阪 五段 32歳) VS 北条将臣(神奈川 六段 31歳)

神奈川県警の大将を務める北条選手が、上段の清家選手が面に出るのをしきりに誘う。
清家選手が居つくまで粘り強く左小手を攻めつづけた北条選手が、
攻めて出ようとした清家選手の一瞬の居つきを逃さずに捨てて小手に飛び勝利。

原田悟(東京 六段 32歳) VS 竹中健太郎(鳥取 錬士六段 33歳)

筑波大学OB同士の対戦。お互い似たタイプの立会いで決めてなく延長に。
最後は左手が浮かずにぎりぎりまで攻め込んだ原田選手が小手を待った竹中選手の面をとらえて勝利。

準決勝

内村良一(東京 四段 25歳) VS 上園修(鹿児島 錬士六段 34歳)

間断なく間合いを詰めて仕掛け技で攻め立てる内村選手に対し、巧みに技を殺していく上園選手。
中々攻撃の糸口をつかめない上園選手が誘い気味に剣先を立てたところを内村選手が小手に飛び込み一本。
残り時間がなくなり焦りの見える上園選手が面に飛んだところを勘良く返して胴を決め内村選手が勝利。

小手は踏み込みが甘い様に見え、胴は手元が低すぎたように見えたが、
スローモーションで見るとやはり2本とも打突部位を捉えていなかった。
旗が3本あがり勝負は決したものの、スローモーションのビデオを見て、なぜこれで一本になるのかと不思議に思う人がいただろう。

判定に疑問の残る試合だった。
やはり、このような大きな試合の審判は難しいなと感じた。

北条将臣(神奈川 六段 31歳) VS 原田悟(東京 六段 32歳)

一貫して厳しく攻める原田選手が試合の主導権を徐々に握っていく。
裏から小手を攻め、手元を上げさせる原田選手の攻めにおされ気味になった北条選手の手元が浮き始める。
延長に入り、北条選手の下を攻め意識が下に居ついた一瞬を見逃さず、
表から北条選手の竹刀中ほどに乗り、竹刀が開いたところを面に飛び込んだ原田選手の勝利。

決 勝

内村良一(東京 四段 25歳) VS 原田悟(東京 六段 32歳)

若さを武器に思い切って仕掛ける積極的な剣道で
初出場ながら決勝に進んだ熊本・九州学院出身の内村良一選手。

宮崎選手に敗れたものの、初出場で決勝に進んだ経歴を持ち、
過去9回の選手権出場、2回の決勝戦出場ながら、いまだ優勝のない原田悟選手。

まるで昨年までの原田選手のように、拍子をうまくつかんだ勘のよい打突を中心に戦うスタイルの内村選手と、
昨年までとは別人のように、拍子をつかんだ勘のよい打突に頼らず、厳しい攻めを施した上で満を持して一撃を繰り出すスタイルで戦う原田選手との印象的な対戦となった。

延長に入り、表から面に渡る攻めを数度見せた原田選手が、最後は内村選手の竹刀を裏から押さえ、手元が浮いたところをお手本のような出端小手で勝利。

原田選手は3度目の正直でついに賜杯を手にしたのでした。

昨年の、「え?なんでそこで竹刀を開いた?」という敗戦から1年、
今年の原田選手は従来の思い切った打突に周到な攻めが加わり、その分他の選手を圧倒した感がありました。

大会を通じて感じたこと・・・。

「強いってどんなこと?」と長年抱いてきた疑問への答えにまたひとつ近づいた来た気がした。
高野佐三郎範士が言う「打って勝つな、勝って打て」という言葉の具体的なイメージをつかむ上で非常に参考になる立合いの多かった大会だったと思います。

上段の選手も二人いて、これも「攻めの過程」を研究する上で勉強になりました。

剣道は、最終局面の打突に際してはもちろん「無心」で「捨て身の一本」を目指すべきだが、もっと大切なのは、その過程だと改めて感じました。

まず「三殺」を行う。

触刃の間では相手の剣先を殺して中心線を制し、相手に有利な体制で間合いを詰めることを許さず、逆にこちらの剣先は相手の剣先が死ぬことで生きるので、すかさず「表・裏」「上・下」「触れる・押さえる・はじく・払う」という各要素を組み合わせて「相手を引き出す攻め」を効かせながら間合いをつめ、打ち間に迫る。

こうして相手を引き出したら、その心の起りを制する技を「先々の先」で施すか、相手が繰り出す技を出端で殺す技を「先」で施すか、相手が繰り出す技に応じて殺す技を「後の先」で施すかして、間断なくこちらが主導権を握って攻め立てて機会を見極める。

こうして相手の気を殺すことで心に四戒を起こさせ、手元を浮かせ、居つかせ、引かせ、剣先を開かせなどして機会を作り出し、満を持して打ち間に入って打突につなげる。

この後は、こちらが四戒を起こさぬように「無心で捨てて打つ」だけ・・・。

ここまでの一連の攻めの過程を完全に制し、その上で、作り出した機会を逃さずに決まるべくして技を放つというプロセスが大切・・・。

今回の大会を「攻め合い」という側面から観戦していると、「打った当たった」という「打突」の側面で観戦していた時には感じなかったことに多く気づいた。

「良くそこから捨てて打てるなぁ」という感じの印象だったものが、「なるほど、この攻めが前提にあるからこそ捨てて打つことができるのか」とか「こう読んだから思い切って捨てていったんだな」などという印象に変わった。

「何の考えも無く捨てていく無謀な猪武者と理合に基づいて捨てている真の武者とは違う」という、今までは見えなかった違いが「攻防の機微」を通して見えてきた気がしました。

剣道の試合の観戦の仕方についてアドバイスを下さった宮本淳一先輩(七段)に感謝です。

来年はもっと多くの立会いを研究すべく、日本武道館に観戦にいきたいものです。


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